大腿筋膜張筋の位置
大腿筋膜張筋は、骨盤から太ももの外側で腸脛靭帯とつながって、下腿の外側までついています。
厳密に言えば、大腿筋膜張筋は腸脛靭帯につながるまでの筋腹のことですが、機能的には下肢の外側を支える組織として、ここではひとつながりのものと考えます。
大腿筋膜張筋は、骨盤から股関節の前面を通りますので、股関節屈曲、外転に働きます。下肢を斜め前に上げるような動作です。
ただし、日常で下肢を斜め前に上げるような動作はあまりありません。
ですから、注目すべきなのは、下肢が固定されているときに骨盤が後方に落ちないように支える機能ということが言えます。
大腿筋膜張筋の重要な機能
上の図は、「観察による歩行分析」(Kirsten Gotz-Neumann、医学書院)に掲載されている歩行時の股関節周りの筋活動です。
筋肉の真ん中あたりに大腿筋膜張筋があります。
赤いバーの上に黒い小さな三角がありますが、これが一番筋活動が活発な地点です。
これを見ると、大腿筋膜張筋は足を振り出す時(股関節を屈曲する)には働いておらず、かかとが着いてから足に体重を乗せるときに一番働いているのが分かります。
つまり片足に体重を乗せる時に、骨盤が後方に沈まないように支えていると考えられます。
ですから、ランニングなどで重心が上下に激しく動く場合などには強く働いていると推測できます。
また、体重が重いかたも負担が大きくなる可能性があります。
大腿筋膜張筋に継続して負担がかかると、コリができて痛みが出てきます。
さらに放置しておくと、トリガーポイントとなって痛みが放散していきます。
大腿筋膜張筋のトリガーポイント関連痛
上の図(「Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction」 (WOLTERS KLUWER, 2018))は、大腿筋膜張筋のトリガーポイント関連痛の場所です。
痛みが出るところが、大腿筋膜張筋から少し離れているのが分かります。
こうなると、太ももの外側に痛みが出るので原因が分かりづらくなってしまうわけです。
さらにやっかいなのは、この痛みの位置にあるのが外側広筋という筋肉で、これもこっている可能性があるということです。外側広筋を押さえると痛みが出るので、そこが原因と間違ってしまう場合もあるわけです。もちろん、そこはきちんと痛みが軽減しているか評価をしながら施術をすすめていく必要があります。
今出てきた外側広筋は太ももの外側の筋肉で、その上に腸脛靭帯があります。
外側広筋と腸脛靭帯の癒着
ブルーのところが外側広筋で、その上を通っているのが腸脛靭帯です。
この二つは走行や働きが似ているため、癒着を起こしやすい部分と言えます。
ですから、大腿筋膜張筋の施術を行う際は、外側広筋と腸脛靭帯の癒着もチェックしておく必要があります。
この癒着が残っていると、大腿筋膜張筋の緊張による腸脛靭帯の炎症の治療の際、大腿筋膜張筋をゆるめても腸脛靭帯の滑走性の改善がなされず、炎症の改善がうまくいかない場合があるからです。
大腿筋膜張筋の施術と、腸脛靭帯、外側広筋のチェックはセットで見ていく必要があるわけです。
今回は、大腿筋膜張筋についてご紹介しました。
みなさまの太もも外側の痛み改善のヒントになれば幸いに存じます。
最後にフォームローラーを使用した太もも外側のほぐし方の動画をご紹介します。
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